ゴッホちゃんの絆礼装にはいくらの価値がある?

※ヴァン・ゴッホの絆礼装ネタバレ注意

















ゴッホちゃんの絆礼装《自画像、カルデアにて》を入手しました。

虚数海域にてひたすら苦悩し続けた自身のアイデンティティにとうとう決着をつけた彼女が、その助けとなったマスターへの親愛をこめて描いた自画像。「ゴッホちゃんの絆礼装が左耳だったらどうしよう」と不安を抱いていましたが、まるで問題なかったですね。

説明テキストであるゴッホちゃんの手紙もまた味があります。普段は口下手な彼女が筆では饒舌であり、ヴァン・ゴッホの語りをコピーしているのがまた興味深い。あと葛飾北斎と仲良しなのもすばらしい。本当に、すばらしい絆礼装だと思います。


いくらになるんですかねこの自画像。


もちろん、売らないでしょう。ゴッホちゃん自身は「好きに売ってくれていい」と言いますが、藤丸くん立香さんは大事なプレゼントを売ったりしないはず。
ですが、人間は持ち物の価値を知りたい生き物です。彼女が懸命に描いてくれたこの絵が一般的にどれほどの価値になるのか、知りたいのが人情ではないでしょうか。

今回はゴッホちゃんの5%を占めるフィンセント・ヴァン・ゴッホの絵画を参考に《自画像、カルデアにて》の値打ちを全力でこじつけていきたいと思います。

※以下、FGOのゴッホは「ゴッホちゃん」、史実の人物であるフィンセント・ファン・ゴッホは「ゴッホ」と表記



1.億万長者だ藤丸立香


まずはゴッホの絵画がどれだけ高いものなのかを見ていきましょう。
「ひまわりはわかる」「とにかくべらぼうな値段で取引されている」というのは、なんとなく知っている人もいますよね。

気になる具体的なお値段ですが、とりあえず日本に関係するものを例として見てみましょう。
時は1987年。当時の安田火災海上保険(現SOMPOひまわり生命)が絵画オークションでゴッホの真筆を落札しました。
作品は《ひまわり》。落札価格は2,475万ポンド。日本円に換算すると53億円です。



フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》
画像引用元:『SOMPO美術館公式ホームページ』https://www.sompo-museum.org/

© Sompo Museum of Art


53億円※です。
※58億円との記述もあり


これは当時のアート業界でも常識外れの数字であり、それまでの歴代記録と比べて約3倍。
この事件をきっかけに絵画の売買価格は極端にインフレしていき、安田火災海上保険の《ひまわり》落札はアート業界に革命をもたらした売買として、今なお語り継がれています。

ちなみに53億円の《ひまわり》はSOMPO美術館(東京都新宿区)常設展にてご覧いただけますので、興味がある方はぜひ足を運んでみてください。


このようにゴッホの真筆は高値で取引されてきました。今回のテーマであるゴッホちゃんの自画像についても、しっかりしたモデルケースが存在します。

自画像のモデルケースには自画像です。ゴッホが最後に描いた自画像《ひげのない自画像》(1889年9月作)を見てみましょう。

ゴッホは自画像をたくさん描いており、その数は生涯で約40点。「貧乏すぎてモデルを雇う金もないから自分を描いていた」との説が有力ですが、そんな絵を100年後の富豪たちが絶賛していると思うと感慨深いものがありますね。

ちなみに《ひげのない自画像》は1998年のオークションにて80億円(7150万ドル)で落札されました。


フィンセント・ファン・ゴッホ《ひげのない自画像》
画像引用元:『WikiArt.org』
https://www.wikiart.org/en/vincent-van-gogh/self-portrait-without-beard-1889


ゴッホの自画像は80億円します。





コーヒー40000000杯飲めちゃうよゴッホちゃん・・・・。



2.贋作でもすごいぞフィンセント・ファン・ゴッホ


「日常にもどった暁には推定ン十億円の絵画とともに帰国する」そんな勝ち組事実が判明した藤丸立香。

「絆10でもれなく80億なのですから、藤丸くん立香さんの将来を考えればゴッホちゃんPUを全人類回すべきなのでは?」
そう考える人もいるかもしれませんが、世の中そう甘くありません。
美術絵画には真贋判定という避けて通れぬ関門があります。

オランダのファン・ゴッホ美術館では「年間200点の鑑定依頼を20年以上おこってきたが、真作と断定したのはわずか14点」といわれるほど。ゴッホは贋作がとても多い作家であり、それだけに鑑定も厳しくおこなわれます。


▲科学鑑定のひとつ「放射性炭素年代測定(C14年代測定法)」の図解。炭素がどれぐらいあるかによってその物の年代がわかる。

画像引用元:『原理 | 加速器質量分析計によるC年代測定法 | 基盤研究部門年代測定研究部』https://www.nendai.nagoya-u.ac.jp/research/tandetron/genri.html
Copyright (c) Nagoya University. All rights reserved.


真贋判定には鑑定人の目利きだけでなく科学調査も取りいれており、とくに有効なのはX線や放射性炭素年代測定による作成年代判定。
原理はとてもややこしいので割愛しますが、つまりは対象の製作時期を科学的に判定するシロモノです。

カンヴァスに使われている素材がどれぐらい劣化しているか、絵の具の色素は当時使われていたものか。
そういった要素から「この作品は作家本人が生きた時代に描かれたのか?」を調べるわけですね。該当年代からはみ出たのならその作家には描けないのだから偽物である、というロジックです。


ここまで言えばおわかりでしょう。

科学鑑定にかけた場合、ゴッホちゃんの絆礼装は十中八九「よくできた偽物」といわれます。

ゴッホの没年は1890年。ゴッホちゃんがカルデアに来たのは2020年。技術が本物であろうと、130年の開きはどうしようもありません。さらば、80億円。



ではゴッホちゃんが親愛をこめたこの自画像には一銭の価値もないのでしょうか。5%のゴッホは本物なのに?それはあんまりではないか?

なんとかこじつけられないかと調べていたところ、興味深いお話を見つけました。ゴッホの紛れもない贋作に、数百万円の値段がついたという話です。

ゴッホ研究の第一人者、圀府寺(こうでら)司氏は『ほぼ日刊イトイ新聞』のインタビュー企画のなかで、こんなエピソードを語っています。


「オットー・ヴァッカーの贋作って、贋作として歴史的にたいへん価値があって、もし売りに出たら、かなり高い値段がつくはずですし」

「ファン・ゴッホ美術館も他の有名な贋作が売りに出ていたとき、たしか、数百万円とかの値ついていたので、そんなに高かったら買いません‥‥と」

引用元:『第2回 画商オットー・ヴァッカー。 | ゴッホの贋作を見て覚えた感動は本物か。 | 圀府寺司 | ほぼ日刊イトイ新聞』https://www.1101.com/n/s/tsukasa_kodera/2019-10-11.html


オットー・ヴァッカーとは1920年代のドイツの画商、というより詐欺師。贋作を何十枚と世界にバラまき、その中にはゴッホの贋作も入っていました。
世界的な詐欺師が関わったため贋作そのものに価値が附随し、市場価値が跳ね上がる・・・・そんな事例を圀府寺氏は語っています。

ここまで極端な例でなくとも「完成度が高ければ贋作と承知で買いたい」と考えるコレクターは少なくありません。

つまり偽物の絵画でも価値は認められるし、人は相応の値段で買おうとするのです。この考え方ならゴッホちゃんの絆礼装も希望が持てるのではないでしょうか。なにせ技術は本物なのですから。


それにしても本人が手掛けてない作品ですら数百万の価値を生んでしまうのですね。フィンセント・ファン・ゴッホ、恐ろしや。



最後に


「はたしてゴッホちゃんの絆礼装を売り払ったらいくらになるか?」

フィンセント・ファン・ゴッホの事例を元にこじつけてきましたが、次のような結果になりました。


①真筆かつ自画像と同等の価値が認められれば、80億円も。

②科学鑑定にかけた場合、フェイク認定される可能性がありうる。

③贋作に数百万円の価格がつくケースもあり、偽物=価値なしとは言い切れない。


真贋鑑定の結果によるブレが激しいものの、高額査定も夢ではないようです。藤丸くん立香さんにおかれましては、ぜひ「物は試しに」とご近所の美術商に《自画像、カルデアにて》を持ちこんだことから始まった大騒動の顛末をゴッホちゃんに聞かせてあげてほしいものですね。コーヒーの1杯とともに。


価値を値段で計る今回の企画はすこし生々しい話題であり、嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。ですが、金銭的価値とは普遍的な物差しともいえます。

外なる神に無理やり産み落とされた、本物のようで本物ではないゴッホちゃん。そんな彼女の作品が一般に「すばらしい!」と認められ、その価値を数字としてハッキリ示せるのかもしれない。そんな可能性を夢見られたので私は満足です。

みなさんはいかがでしょうか。この記事をきっかけにゴッホちゃんやあの海の出来事を振り返っていただければ幸いです。


最後に。この記事はゴッホちゃんを入り口に西洋美術を調べだした素人がまとめたものにすぎません。
「これはこうだと思う」「ここは間違いじゃない?」という有識者の方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけいただけると大変ありがたいです。


それでは今回はこのへんで。

ではまた。




オマケ:ゴッホちゃんが戦闘で描いてるやつハウマッチ


Q1.ひまわり(EXアタック)


A1.53億円

・安田火災が落札した《ひまわり》を反転したものと想定


Q2.自画像(EXアタック)


A2.不明

・《灰色のフェルト帽の自画像》を反転したものと想定
・オランダのファン・ゴッホ美術館コレクションのため、価格不明


Q3.星月夜


A3.不明

・《星月夜》はニューヨーク近代美術館の永久コレクション。未反転。
・1941年にアメリカのコレクターであるリリー・P・ブリス氏より遺贈されたため、価格不明

2021-08-21 18:44:41

Writer:ハチミツ

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