「おかしい」に声をあげる人理。
こんにちは、ハチミツです。みなさんはもう『Flashback Lostbelt No.1 ‐ No.5 -キリシュタリア・ヴォーダイム-』をご覧になりましたでしょうか。
キリシュタリアがFGO2部の旅路を振り返りつつ「話の途中だがワイバーン」「君はアレなんだろう」をフルボイスでしゃべってくれます。まだ見ていない方は各動画サイトよりどうぞ。
とくにキリシュタリア自身が活躍したアトランティス、そしてオリュンポスの紹介は直接2部6章につながる話ですので念入りに。
オリュンポス十二機神は初となる全身立ち絵も公開されましたよ。ゼウスの立ち絵はこんなんでした。
でっか。
『Flashback Lostbelt No.1 ‐ No.5 -キリシュタリア・ヴォーダイム-』18:35付近、視聴者の視線は"そこ"に釘付けになりました。
大西洋異聞帯の王にして全能神、ゼウスの全知全能がデカい。あまりにもデカかったのです。
「オリュンポス十二神の主神だ。そりゃ全知全能もデカいだろうさ」とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、私はそうは思いません。
ゼウスの全知全能がデカいのはおかしい。
今回はゼウスの全知全能がデカいと何がおかしいのかを語ります。ゼウスの全知全能はデカくてはいけない。むしろ慎ましく穏やかで3歩後ろを歩くほど奥ゆかしい。そんな全知全能であるべき。それが私の主張です。
※こういった話題が苦手な方、生理的嫌悪感を覚える方はこの先を読まないことを強くお勧めします。
それではどうぞ。
理由1:全知全能が小さいイコール美徳の時代
みなさん、全知全能はデカければデカいほどスゴイと思ってませんか?
何の疑問も持たず、ただ右に倣えでデカい全知全能を信仰しているのではないですか?まるでオリュンポスの神々を妄信していた星間都市山脈の人類のように。
そんな自分とは今日でさよならしてください。そもそも全知全能に対する価値観は時代や土地によって大きく変わり、とくに古代ギリシャにおいてはむしろ小さい全知全能に美徳を見出していました。
たとえば『古代ギリシアの同性愛』(
①全知全能がデカい=スゴイという価値観は絶対ではない
②全知全能が小さい=えらいという価値観が古代ギリシャにあった
この2つを踏まえたうえで話をゼウスに戻しましょう。古代ギリシャより伝えられたギリシャ神話で最も活躍した主神、それがゼウスです。
古代ギリシャを生きる民の信仰を受けていたゼウスが、古代ギリシャの価値観と正反対の全知全能を有するのがはたして自然でしょうか?
愛ではなく愛玩とはいえ、異聞帯のゼウスは確かに人を想っていました。そんな彼の全知全能が人の価値観と相反するようにデカい。その事実がどうにも私には納得できないのです。
補足①:ゼウスの全知全能が小さい彫刻も実在します。興味がある方は調べてみてください。
補足②:「古代ギリシャやローマの男性彫刻は平常時をモデルにしているから小さい」との考えもあります。今回採用した説はあくまで可能性のひとつとお考えください。
「ゼウスは浮気者なんだからデカい方が説得力ある」
こんな意見があるかもしれません。確かにゼウスはギリシャ神話の物語において人、神を問わず数えきれない女性と関係を持ったギリシャ一の浮気者。ならば彼の全知全能がデカいのはむしろ自然とも考えられますね。
その浮気癖が人間の都合で後付けされたものでなければですが。
古代ギリシャの「なぜ?」をユニークな切り口で紹介する『古代ギリシャのリアル』(著藤村シシン)はゼウスの浮気性を次のように解説します。
ゼウスは偉大な最高神なので、各地の都市の人間がそれぞれ「俺たちの先祖はゼウス神だぜ!」と主張しているため、結果として浮気神話が量産されているということなのです。(P80)
「最高位の神である彼の血が欲しいから」という人間側の都合……。ゼウス側からしたら「なんか知らないうちに世界一の浮気男にされてる!」とお怒りかもしれません。(P80-81)
ゼウスが浮気すればその女性との間に子どもが生まれますね。その子どもを先祖とする古代ギリシャのとある都市の人々は「自分たちこそゼウスの血筋だ!」と主張できます。
つまり、ゼウスの浮気は箔をつけたい人々が無理やりこじつけた権威づけだという考えです。
無数の人間が長い時間をかけて語り継いできた神話だからこそ起こりうる、究極の後付け。だとすればゼウスはギリシャ神話最強の加害者であると同時に最大の被害者といえるかもしれません。
「浮気者だから全知全能もデカい!」という意見は苦しいように思えます。
そもそもFGOのゼウスは異聞帯の存在だからか浮気者という印象があまりなく、むしろ生真面目で彼なりに心から人を想っていた好人物でした。
▲キリシュタリアと確かな友情を結んでいたゼウスいいよね
歴史や神話をモチーフにしているFateシリーズといえど、必ずしも原典のイメージと一致しているとは限らない。異聞帯のゼウスはその最たる例といえるのではないでしょうか。
原典の印象にこだわりすぎてキャラクターを見誤らないよう気をつけたいですね。
ただしアポロンてめーはダメだ。
(ゼウスは)下半身というか股間付近担当となります。合体前提のデザインなので、けっこう無茶なデザインなんですよ。(括弧内は筆者)
こちらはFGO5周年記念特集を掲載した『週刊ファミ通2020年8月13日号』における奈須きのこの発言です。
本編で語られなかった設定として、オリュンポス十二機神の合体形態※においてゼウスは股間部分を担当するとのこと。
※オリュンポス十二機神が揃うとチェンジゲッターできると覚えておけばいいです
ここでゼウスビッグ全知全能狂信者はひとつの仮説を思いつくでしょう。
「合体ロボットの股間担当だからアバターの股間だって全知全能なのではないか」
なるほど筋は通ります。
ですが、私はこの仮説にもあまり納得できません。同じオリュンポス十二機神のデメテルとアフロディーテにゼウスほど際立った特徴がないからです。
ゼウス同様『Flashback Lostbelt No.1 ‐ No.5 -キリシュタリア・ヴォーダイム-』にて全身立ち絵が初めて公開された2体の機神。
デメテルは上の豊穣こそ迫力はありますが、全知全能に匹敵するほどの身体的特徴はなし。アフロディーテに至っては均整がとれた美で際立ったデカさが見受けられません。
デメテルとアフロディーテの担当パーツが不明なのも加味すると、やはり「合体形態で担当しているパーツはアバター時でもデカい」説をとるのは厳しいのではないでしょうか。
これに懲りたらゼウスビッグ全知全能狂信者には反省していただきたいですね。まったくもう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ゼウスの全知全能がデカいのはあまりにも不自然で条理に反しており空想樹の栄養源になりかねない。そうご理解いただければ幸いです。
それでは問題の画像をもう一度見てこの追求を終わりましょう。
FGOよ。なぜよりにもよってゼウスをデカくしてしまったのか。私は悲しい。悲しくてたまりません。
悲しくて、悲しくて、悲しくて。
いや、でっか・・・・。
目が覚めました。私はなにをしていたのか。
小さな全知全能を美徳とする価値観があるように、デカい全知全能に理屈抜きで「でっか・・・・」と感動してしまう気持ちもまた美しいモノのはず。そこに優劣や正誤を押しつける行為自体が間違いなのです。
むしろその多様性を認めてこその汎人類史ではないでしょうか。FGOはそんな当たり前を2300万以上のプレイヤーに伝えたくて、あえてゼウスの全知全能をデカくしたのかもしれません。まったく自分が恥ずかしい。
小さい全知全能にもデカい全知全能にもそれぞれの良さがあり、おかしい全知全能なんてひとつもない。
今日はこれだけ覚えていただければ幸いです。
それでは今回はこのへんで。
『Flashback Lostbelt No.1 ‐ No.5 -キリシュタリア・ヴォーダイム-』はゼウスの全知全能以外にも見どころ満載です。ぜひ2部6章の前に見ておきましょう。
ではまた。
Writer:ハチミツ
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