金融庁の報告書が大炎上しました。
例の報告書の内容をざっくり要約すると「日本人は長寿化しているから、資金計画をしっかりしようね!」といった感じです。
報告書の内容に関しては賛否が分かれるところですが、不思議なことに炎上の矛先は年金制度なのです。
公的年金制度ほど、多くの人に不信感を持たれている制度も珍しいかもしれません。
しかし、報告書内では年金制度の存続については触れられていないにもかかわらず、「年金は破綻する!」と声高に叫ぶオオカミ少年が続出しています。
正確には、「破綻はしないが、受給年齢の引き上げと給付水準の引き下げは濃厚」という見方が妥当です。
これは厚生労働省の徹底的なシミュレーションの結果ですので、それなりの信頼性はあると考えて良いでしょう。
では、なぜ「年金は破綻する!」と声高に叫ぶオオカミ少年が現れるのでしょうか?
公的年金制度の基礎的知識と合わせて、オオカミ少年が現れる理由について見ていきましょう。
まず、公的年金制度について簡単に説明します。
公的年金制度は、「世代間の支え合い」の仕組みとなっています。いま働いている現役世代が支払う保険料によって、いまの高齢者の年金給付がされるものです。
「少子高齢化が進む日本では維持できないでしょ!」
このような指摘がよく聞かれます。
公的年金制度には少子高齢化への対策として、「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されています。
マクロ経済スライドとは、給付と負担のバランスを見て年金を調整する仕組みです。
公的年金制度を維持するために下記の対策がとられます。
・保険料の引き上げ
・年金支給開始年齢の引き上げ
・給付金額の引き下げ
つまり、マクロ経済スライドによって公的年金制度が維持される可能性が高い、ということです。
そして、老後生活の支出を可能な限り抑えることで、年金のみで生活することもできます。
あくまで、老後も平均以上の豊かな暮らしをしたい人は、自助努力が必要だという話なのです。
年金と生活保護を併給するという選択肢もあります。
いざ、「老後破産」が実現してしまったとしても、国はセーフティーネットを準備しているんですね。
では、なぜ「公的年金制度は破綻する!」とオオカミ少年は声高に叫ぶのでしょうか?
それは、「プロスペクト理論」という行動経済学で理解すると見えてきます。
プロスペクト理論をざっくり説明すると、「人は得る喜びよりも、失う恐怖で行動する」というものです。
人は不安を感じると、より行動的になります。
逆に「〇〇すると得するよ!」と言われても、人はなかなか行動しないものです。
オオカミ少年が不安を煽る理由は、人を不安にさせるとモノがよく売れるからです。
これはマーケティング手法として非常に有効ですが、不安を煽るように加工された情報は正確性に欠きます。
メディアの報道が不安を煽る内容が多いのは、注目を集め、広告によってモノを売るためです。
コピーライターの糸井重里さんの言葉にこのようなものがあります。(Twitterより一部抜粋)
“ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。「より脅かしてないほう」を選びます。「より正義を語らないほう」を選びます。”
感情を不必要に掻き立てるマーケティング手法に対する警鐘でしょうか。
著名なコピーライターならではの言葉の重みが感じられますね。
オオカミ少年に振り回されたくなければ、一次情報にアクセスしましょう。
加工前の情報と、加工後の情報を見比べてみると、いかに断片的で偏った情報であるかがわかります。
情報を加工する人の意図を見抜くことで、知らず知らずのうちに損することを防ぎましょう。
言うまでもなく、この記事も「加工された情報」です。
ぜひ一次情報として、金融庁の報告書に目を通してみましょう。
■金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
Writer:しまづ 😎看護師ライター
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