こんにちは、矢駒(@chibayakoma)です。
税務署職員がOB税理士から現金を受け取り、処分されたとの報道がありました。
参考:OB税理士から現金受け取り 当時の税務署長らを処分(テレビ朝日)
元副署長でOB税理士の人物が税務署幹部に、2014年から2017年にかけて、陣中見舞いとして現金12万円を渡していたとのこと。
税務署職員は、利害関係者と私的交流をしてはいけません。
私的に交流がある税理士であっても、飲み会の会費は1円単位まで割り勘をしないといけません。
今回のようは不祥事は、職員も防ぐことが可能でした。
しかし、実際に税理士から陣中見舞いが来れば、断るのは困難。
(さすがに今回の現金での支払はおかしいです)
なぜなら、税務署の組織は身内の結束で成り立っているからです。
当たり前ですが、税務署職員も普通の人間です。
退職した瞬間に退職者との縁を切ることは、人情的にかなり厳しいもの。
民間の場合には退職者と交流を持っても問題ないですが、税務署の場合には、利害関係者との交流は禁止されています。
OB税理士の場合、顧客の所轄税務署とは利害関係者になります。
なので、去年まで一緒に働いていた税務署の同僚と利害関係者になることも珍しくはありません。
OB税理士も元税務署職員です。
陣中見舞いが倫理規定的にOUTなのは理解してます。
それでも、差し入れを持ってくるのは一緒に働いてた仲間意識が高いが故に発生します。
現職の立場としては、厄介極まりない事情ですが。
今回のOB税理士は、元副署長とのことです。
2014年から陣中見舞いをしていたとのことなので、現金を渡していた署長よりも先輩であったと推測されます。
もし、自分の会社の元社長が、差し入れを持ってきたら拒否できますでしょうか。
まず、不可能ですよね。
むやむに受取拒否をしたら、その後どうなるかわかりませんので。
税務署とOB税理士も同じです。
税理士からの陣中見舞いを受け取らなかった場合、OB税理士の税務署への対応が悪くなります。
税理士の対応の悪さは、税務調査の非協力的な態度へと繋がります。
調査先の関与税理士が非協力的なのは、調査担当者としてはとても面倒です。
そこまで考えてしまうと、迷惑な話を穏便に済ませるには、陣中見舞いを受け取ることなのです。
もっとも、陣中見舞いで現金を渡す税理士の思考回路は、理解できませんが。
今回の税理士からの受け取りで処分を受けたのは、税務署職員のみです。
収賄事件になれば、税理士も処分されますが、陣中見舞い程度では税理士に影響はありません。
税理士としては、今の時点で便宜を図ってもらえなくても、税務署に楔を打ち込むことはできます。
税務調査では重加算税を賦課する決定権は税務署長にあります。
もし、重加算税の賦課するのが五分五分の状況の場合、陣中見舞いをした税理士が一声かければ情勢が傾こと可能性は否定できません。
つまり、収賄罪にならない程度なら、税理士が税務署に陣中見舞いをすることに関して損がないのです。
もっとも、それを避けるために、税務署側に倫理規定が設けられているのですが。
国税組織が犯罪の温床になっているかと思われますが、実際には違います。
平成30年に、国税庁の職員が処分されたのは47件。
国税組織は57,679人在籍しますので、処分を受けた職員の割合は、わずか0.08%です。
0.08%は、1万人の中8人。
年末ジャンボ宝くじの5万円が0.01%なので、8枚宝くじを購入して5万円が当選する程度の確率です。
そう考えると、国税組織の不祥事の割合は、かなり少ないです。
不祥事は1件でもあったらいけないですが、現実的にゼロにするのは不可能。
参考:根絶不可能!税務署の不祥事が無くならない理由と多発する原因
また、今回の不祥事で一番被害を受けるのは、現職の税務署職員です。
おそらく、それでまた一層倫理規定が厳しくなります。
倫理規定が厳しくなると、機械的な対応をしなければいけません。
機械的な対応は、冷徹だと批判する人もいます。
どっちに転んでも、税務署職員の環境が悪化するのは間違いないです。
参考にならない程度のご参考に…
Writer:矢駒(ヤコマ)元税務署ブロガー兼ライター
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